探究の意味は、物事の真相、価値、在り方を深く考え、筋道を辿り明らかにすることです。
現代社会は物事の移り変わりが激しく、容易に予測できない時代です。変化が激しい国際社会を生き抜くため、文部科学省による新学習指導要領にて探究学習の重要性が提唱されています。
自分の生き方を考えながら能力を育成していくことを目標に掲げる探究学習は、これからの時代においては、さらに重要性が増していくと考えられています。
この記事では、探究学習の重要性や目的、学校種別の位置づけ、正しい方法、一役を買うかもしれないブレストワークショップの特徴を紹介します。
探究学習とは
探究学習とは、生徒が自ら問いを立てて答えていく学習です。
通常の科目では、教師が問いを立てて生徒が正解を探していきますが、探究学習では問いを出すのは自分自身。目的としているのは、その問いを解決したいという探究心を育むことです。
生徒の主体性をいかに引き出せるかが重要なキーワードになっているため、教科にとらわれない横断的かつ総合的な問題解決の能力が育みます。
探究学習のテーマは各学校で自由に設定できますが、主に下記のテーマが採用されています。
- 職業
- 環境
- 国際理解
職業をテーマにした探究学習では、自分自身に合っている仕事を職業体験の中から模索することができます。環境をテーマにした学習では、地球温暖化やエネルギー資源問題などの課題に取り組み、持続可能な社会を作るための方法を考えていきます。
国際理解では、グローバル化が進む現代社会で生き抜くための共生を学ぶことができ、諸外国の習慣や価値観を学習することができるでしょう。
冒頭でも記載した通り、現代社会は移り変わりが激しい時代です。そのため、社会に出た時にはスキルだけではなく、自分の資質を発揮できる主体性が求められているのです。
学校種別の探究学習の位置づけ
2022年から実施予定(2019年から先行実施)となる次期学習指導要領の改正で高い注目を集めている探究学習は、小学校、中学校、高等学校で位置づけが異なります。
ここからは、学校種別ごとの具体的な位置づけを見ていきましょう。
小学校
小学校の探究学習は「総合的な学習の時間」に位置付けられており、文部科学省による新学習指導要領では、次のように目標を規定しています。
- 探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする
- 実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする
- 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う
小学校の探究学習では国際理解や環境などの広いテーマではなく、身近で起こる物事から問題を見つけ、解決するための方法や課題を模索していくのがいいとされています。
また、探究学習の資質や学習のよさの理解に重点を置いているため、先生の手を借りることなく解決できる身近な問題をテーマにする方がいいでしょう。
中学校
中学校の探究学習は「総合的な学習の時間」に位置付けられており、課題を解決するための能力を育成する目的で実施されています。
教科の枠を超えた横断的かつ総合的な学習の習得を目的にしているため、探究学習のサイクルを学ばせる必要があります。
- 課題の設定
- 情報の収集
- 整理・分析
- まとめ・表現
学校の実態に応じながら国際理解、職業、情報、環境、福祉、健康などの現代的な課題をテーマにし、生徒の興味や関心を踏まえながら学校がある程度の課題を設定します。
探究学習白書の調査によれば、中学校で行われた探究学習のテーマで最も多いのは「職業」で、次に「福祉」「国際理解」「伝統文化」と続きます。
目標や内容について学校が定めるとしていますので、上記の調査結果を基に、適切なテーマを選定していきましょう。
高等学校
高等学校の探究学習は「総合的な探究の時間」と位置付けられています。
特定の科目や教科に留まることなく総合的かつ横断的であるという点が重要であり、課題の設定や情報を収集する方法もすべて生徒が主体となり設定していきます。
2022年度から新たに導入される高等学校学習指導要領では、探究という名前が付く科目が7つ追加されています。
- 古典探究
- 地理探究
- 日本史探究
- 世界史探究
- 理数探究
- 理数探究基礎
- 総合的な探究の時間
この中で必修となっているのは「総合的な探究の時間」だけであり、他は各学校が自由に加えることができる科目となります。
高等学校の探究学習はテーマも情報収集の方法も幅が広がるため、大学、研究機関、企業など、さまざまな外部の協力も視野に入れながら課題を解決していきます。
探究学習の正しい方法・進め方を紹介
生徒の探究心と自主性を育む適切な探究学習を行うためには、実施する教員側が正しい方法と進め方を理解している必要があります。
文部科学省では、探究学習の進め方として4つのステップを推奨しています。
- 課題の設定
- 情報の収集
- 整理・分析
- まとめ・表現
下記の項目で一つずつ詳しく解説します。
課題の設定
探究学習で最も重要なのは『課題の設定』です。
どのようなテーマを設定するかで探究学習で得られる効果が大きく変わるため、生徒が自身で課題を設定することに重点を置きながら、深い問いを見つけ出す必要があります。
課題を設定する際は、下記の注意点を必ず押さえるようにしましょう。
- 生徒の疑問を引き出すことができるか
- 興味や関心がある課題を設定できているか
- 身近で取り組みやすい課題を設定できているか
生徒自身が主体となり積極的に探究学習を行ってもらうためには、地域や環境など、身近でありながら自分にも関連する課題であることが重要です。
生徒の興味や関心を引き出すためには、事前のワークシートや話し合いの場を設けるなど、課題を設定する際にヒントとなる取り組みを実施しておきましょう。
情報の収集
課題に対してどのようなプロセスで情報を収集するかも生徒が決めていきます。
情報収集の活動は生徒の自発的な取り組みが求められているため、情報の取捨選択や収集方法などは主体的に行う必要があります。
情報収集の段階においては、下記の点に注意してください。
- 情報収集は複数の方法があることが望ましい
- 情報収集をする目的や意味を認識をさせる
探究学習は「やらされる授業」ではなく、「自ら考えて行動する授業」です。そのため、生徒には情報収集をする意味や目的を理解させておかなければいけません。
図書館で調べる、インターネットを使う、現地へ行く、周囲の大人へ聞くなどさまざまな情報収集の方法がありますが、1種類に偏らせないようにするのもポイントです。
1種類の方法だと情報が偏る可能性がありますので、情報収集力を向上させるためにも、複数の方法を提案できる環境を作りましょう。
整理・分析
これまで集めてきた情報を整理し多角的な視点から分析していきます。
- 生徒に新しい視点を与えるためのアドバイスを送る
- 時には生徒へ具体的な方法を提示することも重要
今まで生徒は膨大な情報を整理・分析してきた経験はありませんので、戸惑っている場合は具体的なアドバイスを送ることも重要です。
たとえば、「シンキングツールの活用」や「なぜこうなるのかを順序立ててみよう」など、生徒に新たな視点に気付かせるためのアドバイスがよいでしょう。
また、集めた情報だけではなく整理と分析が足りない場合もあります。その際も、生徒が自身で気付くようなアドバイスを送ることをおすすめします。
まとめ・表現
最後は、これまでの探究学習で集めた情報をまとめて発表する場です。基本的に半年から1年間の長い期間で行われる探究学習は、最後の総仕上げとなる最終発表で締めくくります。
発表会では、生徒だけではなく教員も共に問題について考えます。新たな発見や課題が生まれる場でもありますので、他生徒の発表会も集中して聞かせるようにしましょう。
質の高い探究学習をするならブレストワークショップがおすすめ!
探究学習は生徒が自ら問いを立てて答えていくという性質上、生徒同士が話し合いアイデアを出し合う環境を作り上げる必要があります。
そんな探究学習に一役買いそうなのが、ブレイン・ストーミングという発想です。
ブレイン・ストーミング(以下「ブレスト」という)は、1953年にアレックス・F・オズボーン氏が提唱した会議形式の1つの発想法で、みんなでアイデアを出し合い化学反応を起こすという考え方です。
活発なディカッションを生み出すため、何を言っても大丈夫という安心かつ安全な場を作ることが重要。つまり、誰が何を話してもいいという雰囲気を作ることが大切です。
そのためには、心構えとして下記の2点を必ず押さえておきましょう。
- 仲間のアイデアに乗る
- 人の話を否定しない
質よりも量が大切という考え方なので、人の話を否定しないだけではなく、自ら面白いアイデアを出そうと考える必要もありません。
普通のアイデアでも周囲の人がすごいリアクションを取ることで、どんな内容でも気軽に話すことができるという雰囲気を作ることができます。
相手のアイデアを聞き、自分のアイデアを話す。簡単なように見えて実は難しいブレストですが、話し合いが重要な探究学習には向いている考え方です。
まとめ
探究学習の重要性、目的、位置づけ、正しい方法などを詳しく紹介しました。
これからの時代はスキルはもちろんですが、自ら考えて行動する主体性が求められます。探究心や主体性を育む探求学習は、文科省も提唱する重要な学習指導要領です。
探究学習を進めるうえでは、学校関係者が意味や仕組みを理解していなければいけません。
そうしなければ、生徒からの疑問に答えてしまったり、的確なアドバイスを送ることもできません。重要なのは、教員が探究学習の概要を理解し、生徒を導くことです。
生徒同士の対話が重要な探究学習において、ブレストは非常に重要な考え方です。探究学習の在り方や進め方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
入試広報戦略LABOでは、大学・専門学校・高校に向けて、ブレストワークショップを行っています。
グループ会社である面白法人カヤック流のワークショップを体験いただけます。
ご興味ある方は、是非お問い合わせください!
コメント