「大学内部にブランド意識が浸透していない気がする」「インナーブランディングの効果を高めたいけど、どうすれば良いか分からない」
上記のように、インナーブランディングに関する悩みを抱えている広報担当者の方も多いのではないでしょうか。
ブランディングを行う際は、外部への情報発信に力を入れる前に、内部の改革が欠かせません。大学と教職員の間、教職員同士、または在学生同士でブランドを理解し、創り上げていくという意識を持つことが重要です。
しかしインナーブランディングでは、単純に大学の理念や価値観を上から下へ浸透させようとしても上手くいかないケースが多いです。大学と教職員の間、教職員同士、または学生同士でブランドを理解し、創り上げていくという意識が必要になります。
そこで今回はこの記事ではインナーブランディングの詳細や必要性や、インナーブランディングの成功率を高めるポイントについて解説します。最後まで読めば他大学の取り組み事例も分かりますので、ぜひ参考にしてみてください。
インナーブランディングの必要性
インナーブランディングとは、自学の価値観を内部に浸透させることです。大学の理念やブランドを実現させていくために、教職員や在学生が自分事として主体的に行動できるようにします。ブランドの価値に携わる人々の考え方や行動を変えていくのです。
ブランディングを推進させるには、外部に発信するだけでなく、内部でも共通の認識を持つことが大切です。内部の人間一人ひとりがブランドを正確に理解して外部に浸透させることで、学生や保護者など関係者の中に強固なブランドイメージを形成していけます。その結果、中長期的に大学の価値自体を高めることに繋がるでしょう。
さらにインナーブランディングを続けることで、以下のようなメリットも得られます。
・教職員間の連携が強化される
・教育の質が向上する
・在学生のモチベーションが向上する
・他大学との差別化を図れる
インナーブランディングに励んでいる企業は多いですが、大学や専門学校ではあまり積極的に実施されていないのが現状です。そのため、これから解説するようなポイントを押さえて活動することで、結果的に他大学と差をつけられるようになるでしょう。
インナーブランディングの成功率を高める4つのポイント
インナーブランディングの成功率を高めるには、下記の4つのポイントを抑えることが重要です。
①現状を適切に把握する
②押し付けない
③主体自主的な行動を促す
④中長期的に継続する
それぞれ見ていきましょう。
①現状を適切に把握する
在学生や教職員を対象に調査し、現状のイメージを把握することから始めましょう。大学側の想定するブランドイメージとの乖離や、どういった点に課題があるかを理解できる重要な情報源になります。
例えば、神奈川大学は「グローバルで世界に誇る魅力的な大学」を目指してブランディングを進めるため、在学生と教職員に対してアンケートの協力を依頼しています。
アンケートを行う上でポイントとなるのが、次の3つです。
・質問数は5~10個にする
・回答しやすい質問内容にする
・選択型にする
質問の量が多すぎると業務時間が削られたり、後回しにされたりして回答率が下がってしまいます。多くて10個程度の質問量にし、2〜3分以内に回答できるように設定しましょう。
また回答欄は「1~5の中から選ぶ」「満足度をA~Eの5段階から選ぶ」のように、簡単に答えられる形式にしてください。アンケート結果を集計する際も、数値化しやすくなります。
他にも、インタビューやミーティングという形で情報収集するのもおすすめです。
②押し付けない
インナーブランディングを進める上で注意したいのが、押し付けになってしまうことです。
理事長やブランドの推進チームが決めたことを無理に浸透させようとしても、反発を招いたり、教職員や在学生のやる気を削いだりする可能性があります。嫌々ながら実践するような強制的な方法では長続きしないでしょう。
例えば教職員向けWebサイトを構築することで、大学側のメッセージを効果的に発信しやすくなります。このとき、大学の理念や歴史などの基本情報を載せるだけでなく、教職員に興味を持ってもらえるようなコンテンツを拡充していくことが重要です。一例としては、ブランド推進チームのメンバーにインタビューした記事や、部門を横断した交流会の情報などがあります。
無理に押し付けるのではなく、「同じ方向を向いて活動するために何をするべきか」を考えていきましょう。
③主体的な行動を促す
押し付けにならないようにするには、できるだけ教職員や学生自身が自学のブランドを理解し、納得した上で主体的に行動してもらうことが大切です。「こんな大学ブランドを作り、育てていきたい」という思いは強い原動力となり、その教職員や学生と接するさまざまな人に影響を与えるでしょう。
例えば愛知東邦大学では、ブランド推進委員会を発足させ事実の調査をしたあと、結果を冊子にまとめて教職員に手渡しで配りました。データ配布ではなく「なぜこのブランディングが必要なのか」を直接説明することで、深く理解してもらい、すべての教職員に自分事として考えてもらうようにしたのです。
まずはインナーブランディングの目的を共有し、自分事として捉えられるような仕組みを作ること。そうすることで立場や役職、年齢などに関係なく、多様な意見やアイディアを出し合うことができるようになるでしょう。
④中長期的に継続する
インナーブランディングの効果が出るまでには時間がかかります。一朝一夕で教職員や在学生の行動が変わるわけではなく、徐々に浸透して変化していくもの。効果が出るまでは、焦らずに繰り返し理解を深める活動をしていくことが重要です。
例えば京都産業大学では、「むすんで、うみだす。」という理念や価値観を学生や教職員と共有するため、学内モニュメントやバナー、タペストリー、ポスターなどを展開して一体感を醸成しています。
また同学の特設サイトでは、「ONLY ONE ポーズ」をした学生と教職員の写真を掲載。一人ひとりがお互いの個性を認め合い、未来の可能性を生み出していこうとする姿勢が表れています。
上記のように中長期的な視点でインナーブランディングに取り組み、定期的に効果を測定していきましょう。
インナーブランディングの取り組み事例を紹介
インナーブランディングに取り組んでいる他大学の事例をご紹介します。
①愛知東邦大学
日本国内のブランディング活動を評価する「Japan Branding Awards 2019」で、愛知東邦大学が「Winners」を獲得しました。過去の受賞は一般企業ばかりだったため、愛知東邦大学が大学としての初受賞という快挙を成し遂げたのです。
同学はブランディングプロジェクトを発足後、在学生・教職員・保護者・卒業生・就職先企業など多くの関係者にアンケートを実施。大学側が思い込んでいる大学のブランドイメージと、各ステークホルダーが見えているブランドイメージにどれだけ差があるかを徹底的に調査しました。そして浮き彫りになった事実を冊子にまとめ、教職員へ直接配布したのです。
また意見を交わす場は会議ではなく座談会形式にし、意見を出しやすい空間デザインを行いました。堅苦しい雰囲気では出てこないような意見が活発に出てきたことで、大学のブランドコンセプトを確定できたといえます。
さらに、各教授が名刺サイズのクレドカードを作成。それぞれが大事にしている価値観を、クレドという形で学生に伝えています。オープンキャンパスに来た高校生にも、教授自らが積極的に配布しています。そうすることで、教授の価値観に合う学生がゼミに来てくれやすくなるというメリットもあるのです。
②法政大学
法政大学ではブランディング推進チームで、継続的にワークショップを開催。「法政大学憲章(法政大学のあり方や方向性を宣言したもの)を自分事として語れる職員」の養成を目指しています。
2019年度には教職員20名がワークショップに参加し、「法政大学はどんな大学であるべきか」「学生は何を学ぶべきか」といったテーマについて自由な思考でアイディアを出し合い、意見交換を行いました。
また「法政大学憲章」を学内外に周知・浸透させるため、推進チームメンバーが研修を実施しているのも特徴です。2020年度には「2050年の未来において、法政大学は社会に何を提供すべきか」というテーマでワークショップを行い、未来の法政大学について考える機会を創出しました。
上記のような取り組みにより、研修の参加者等からは「本学のブランディングが徐々に浸透してきていると感じる」との声も上がっています。
まとめ
今回はインナーブランディングを行う上でのポイントや、他大学の事例について解説してきました。
インナーブランディングは自学の理念やブランドを内側から実現させていくために、欠かせない取り組みです。教職員や在学生一人ひとりが正確に理解して外部に発信することで、結果的に学生を呼び込む魅力ある大学になっていくでしょう。
インナーブランディングの成功率を高めるには、次のような点を重視しましょう。
・アンケートなどで情報収集し、現状を適切に把握する
・一方的に理念を押し付けず、「同じ方向を向いて活動すること」を大切にする
・しっかり納得してもらった上で、主体的自主的な行動を促す
・中長期的に継続し、インナーブランディングの効果を測定する
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