「大学のブランディング戦略や方針に悩んでいる」「現状のブランディングでは効果が出ていないような気がする」
そのような悩みを抱えている広報担当者の方も多いのではないでしょうか。
18歳人口が減少し続けている日本において、大学の経営を成り立たせるには学生に選ばれる大学で居続ける必要があります。そのためには効果的なブランディングが欠かせません。
この記事では大学のブランディングを行うメリットや重要な5つのポイントを解説します。最後まで読めば他大学のブランディングの成功事例もわかりますので、ぜひご覧ください。
大学のブランディングを行うメリット
大学のブランディングをするメリットを解説します。
自校の強みに合致した入学希望者が増える
ブランディングによって、大学が提供できる価値を高校生に認識してもらいやすくなります。大学特有の強みやここでしか学べないことなどがわかれば、学生側にとっても自分のニーズに合う大学がどこなのか選びやすくなるでしょう。その結果、自校の強みに興味をもっマッチした入学希望者が増加する可能性が高まります。
また大学の提供できる価値と学生が求めていることが合致することで、入学後の活動の質が上がったり、途中退学を防いだりといった効果も期待できるでしょう。
さらに大学の固有のブランドイメージが周知されれば、受験生本人以外にも保護者や高校教師、予備校講師など多くの人に認識を持ってもらいやすくなります。そのため、学生を集めるのに有利な状況を作り出せるでしょう。
広報活動を効率的に行える
大学のブランディングの方向性が固まることで、広報活動を効率よく実施できるようになります。
例えばイメージカラーやロゴが統一されていれば、Webメディアの記事やYouTube動画などのコンテンツを発信する際に反映できます。広報誌やSNS用のアイコン、マスコットキャラクターなどを作成するときも役立つでしょう。毎回新規デザインを考案する必要がなくなり大量発注も可能になるため、広報部門が活動に専念しやすくなります。
また学生側にも、パンフレットやSNSなどどの媒体からでも一貫した大学のイメージを感じとってもらいやすくなるでしょう。
大学のブランディングで重要な5つのポイント
大学のブランディングをする際は、次の5つのポイントを押さえることが重要です。
①現状の大学のイメージや認知度を把握する
大学のブランディングを行う上うえで重要なのが、以下の2つを埋めていくことです。
・世間から持たれている大学・専門学校のイメージ
・自校がアピールポイントとしている強み
例えば大学側が「就職に強い」ことを強みとして発信しているつもりでも、受け手がその通りに受け取っているとは限りません。有名なスポーツ選手を輩出した場合は「スポーツに強い大学」だと思われやすくなってしまいます。
大学イメージを把握するには以下のような方法が有効です。
・日経BPコンサルティングの「大学ブランド・イメージ調査」の結果を確認する
・在学校生へのアンケート調査
・TwitterなどSNS上でエゴサーチ
特に「大学ブランド・イメージ調査」の資料では、自校の強み・弱みや、ライバル大学との差異といった情報を収集できます。今の自校の状況が客観的にわかり、今後に活かしやすくなるでしょう。
また、大学の強みを理解してもらうには大学名が知れ渡っていることも重要です。認知度によっても情報発信の仕方が変わります。
例えば県内で大学の認知度が浸透しているなら、県内には大学の特色や強みを具体的に伝えられるような戦略をとります。一方、県外には大学名を知ってもらうことに注力するのが良いでしょう。
大学のWebサイトでは「すでに大学名を知っている人に向けたコンテンツ」を発信する、広告媒体では「大学名を知らない人に対してメッセージを発信する」など使い分けてみてください。
②高校生のニーズを把握する
受験生が志望校や進学先を選ぶときの決め手を知ることで、的確なアプローチが可能になります。
2019年の「高校生価値意識調査」によると、予測困難なこれからの時代では「自分のやりたいことや夢を大切にし、新しいことに挑戦して将来につなげていきたい」という思いが強いことが分かりました。さらに「プロ突進タイプ」が2014年には25.2%でしたが、2019年には33.6%に上昇。将来的に特定の分野のプロとして、自分のスキルや経験を駆使して生きていきたいという意思が伺えます。
引用:リクルート進学総研 高校生価値意識調査
上記の結果により、高校生がやりたいことをサポートできる学びの場を提供することが重要といえるでしょう。
また在学生へのアンケートやインタビュー調査もおすすめです。年齢が近いので高校生が教育機関に求めているものを把握しやすくなります。
③他大学との差別化を図る
多数の大学のなかから高校生に進学先に選んでもらうには、他大学とは違う特徴が必要です。現状では、特徴がないと有名大学に人気が集中してしまいやすいからです。
例えば武蔵野大学は2019年に私立大学初の「データサイエンス学部」を設置しました。2020年度には志願者数が2215名にのぼり、倍率31.6倍という驚きの結果に。また全科目で講義なし・テストなしを徹底し、学生が自ら仲間と正解を導き出せるような講義スタンスを導入しました。さらにビジネス向けコラボレーションツールSlackを活用し、学生同士のコミュニケーションを活性化。教員への質問もツールを通して随時行えるようにしています。
文系・理系にこだわらず、実際にIT業界の技術者として活躍できる人材の育成に力を入れている事例といえます。
ブランディングをする際は差別化に加えて、他大学とは違う付加価値を継続的に提供することも大切です。そうすることで競合が真似できない確固たるイメージを構築できるでしょう。
④自校のブランドを明確にし、目標を設定する
大学側が「学生に伝えたい自校のブランドの中身」を把握しておくことも欠かせません。学部によってアピールポイントにズレがあるなど、学内で認識が統一されていないケースも多いです。自校が強みにしたい部分や方向性を十分に議論し、中長期的に維持できるようにしていきましょう。
中身が決まったらKPIを設定し、項目ごとにどれくらい伸ばしていくか数値目標を立てます。KPIとは目標達成の度合いを計測・監視するための定量的な指標のことです。
ブランディングの項目の例としては次のようなものがあります。
・ブランドコンセプトが明確か
・全職員がブランドに基づく行動をしているか
・他と異なるブランド体験を提供しているか
大学の場合は知名度や入学志願者数、入学者数、偏差値などの数値で判断しがちです。しかし、この基準では小規模の私立大学は低い立場に置かれてしまいます。
規模が大きくなくても個性がある大学としてブランド価値を向上させるには、新たな指標を取り入れていく必要があるでしょう。
⑤効果を測定し振り返る
ブランディング施策の効果を定期的に測定し、次に活かせるよう振り返ることも大切です。
効果測定には下記のような方法がおすすめです。
・前述した「大学ブランド・イメージ調査」の確認
・インターネットモニターによるアンケート調査
・高校生や保護者、地域住民への街頭インタビュー調査
「大学認知率がアップしているか」「大学の印象やイメージが向上しているか」「大学への興味が高まっているか」などを確認しましょう。期待通りの効果が得られた施策はより拡大し、効果が少なかったものは改善策を考えていくのが良いです。
大学のブランディングの事例を紹介
効果的なブランディングを実施している大学の事例をご紹介します。
①近畿大学:「近大マグロ」を完全コンテンツ化し独自性を確立
近畿大学は民間企業のようなPR活動に取り組み、従来の大学における宣伝や広告へのネガティブなイメージを払拭しました。
今でこそ「近畿大学といえばマグロ」と定着している近大マグロですが、2007年時点ではすでに終わったコンテンツだと思われていたのです。しかし、単なる研究成果ではなく「近大の実学教育をわかりやすく伝えるコンテンツ」として位置づけ、あらゆる広告で活用するようにしました。
なかでも有名なのが2014年元旦に新聞一面に掲載された広告です。雪山を突き破って顔を出したマグロと「固定概念を、ぶっ壊す。」というキャッチコピーが話題になりました。大きな反響を呼び、2014年には早稲田大学や明治大学をおさえて志願者数が1位となっています。
大阪流のユーモアにあふれたPR企画や、大学案内冊子をファッション誌のような「Kindai Graffiti」にするなど、教育機関の枠にとらわれない自由な挑戦を続けています。
②国士舘大学:女子仕様のキャンパス創設で女子学生増加を実現
国士舘大学は従来の精神を守りつつ、単なるイメージチェンジにとどまらない「大学の実態そのものを変える」ことを方針としました。
世田谷キャンパスを立ち上げる際に、女子学生のニーズを満たす環境整備に注力。天井を明るくして開放的にする、外壁をポップな色にする、女子トイレに姿見を設置してホテル仕様にするなど全く新しい試みを行いました。
それまで男子学生のイメージが強い大学でしたが、新しいキャンパスの創設で男女共学のイメージが醸成され、女子学生の入学者を増加させることに成功したのです。さらにキャンパス内のレストランや図書館を地域市民に開放するなど、地域に開かれた場所としても知れ渡っています。
まとめ
今回は大学のブランディングで重要なポイントや、実際の事例について解説してきました。
大学のブランドイメージを周知させることで、大学側の提供できる価値と高校生のニーズがマッチし、強みに合致した入学希望者を増やしやすくなります。またブランディングの方針が固まれば、広報活動もより効率的に実施できるでしょう。
大学のブランディングを行う際は、まず現状のイメージや認知度を把握することから始めてください。そのうえで現在の高校生のニーズを適切に掴み、他大学とは違う価値を提供し続けることが大切です。関係者間でしっかりブランドの中身の認識を統一させて実施し、定期的に効果を測定して次に活かしましょう。
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