大学は今、これまでにない危機を迎えています。年々少子化が深刻化し、大学の存続自体が危機的な状況となっているのです。
このような状況下において、志願者・入学者を増やすためには、学生に憧れと親しみを持ってもらうことが必要となります。
本記事では、学生募集戦略のヒントをご紹介しますので、参考にしてみてください。
進む少子化、学生募集戦略の見直しが必要
日本私立学校振興・共済事業団が2023年8月30日に公表した、2023年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」では、調査に参加した600校のうち320校が定員割れという結果となりました。
この数字は全体の53.3%にあたり、2022年度の結果と比べて新たに37校が定員割れをした結果となります。
参考:日本私立学校振興・共済事業団「2023年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」
また、大学入試センターが2023年12月5日に発表した「令和6年度大学入学共通テストの志願者数等について」では、大学入学共通テストの確定志願者数が32年ぶりに50万人を下回ったと発表しました。
前年と比べても、2万668人減少しており、志願者数は49万1,913人という結果となっています。
参考:独立行政法人大学入試センター「令和6年度大学入学共通テストの志願者数等について」
どんなときに学生募集戦略を見直すべき?
なぜ定員割れが深刻化しているのでしょうか。日本は2021年に、ついに18歳人口減少期に突入しました。その影響がいよいよ顕著になってきたというのが、大きな理由といえます。
また、新型コロナウイルス感染症が流行した影響もあり、子ども自身が大学進学を志望しないケースや、経済的な理由で進学を見合わせるケースも増加傾向にあるようです。
では、どのような場合において、大学は学生募集戦略を見直すべきなのでしょうか。主なケースを見てみましょう。
定員割れ、志願者減を起こしている
日本では国立大学を除いた大学は、全て文部科学省の設置許可を受け、設立されます。
大学設置・学校法人審議会は1991年、2003年と2回規制緩和を実施し、その結果1990年では500校前後だった大学の数が、2020年になると800校ほどに増えました。
一方、子どもの数は減少傾向にありますから、必然的に一部の学校では定員割れが発生します。
そのため大学は学生を獲得するために、自校の魅力や強みを積極的に発信していくことが重要となります。
大きな改革を行った、または行う予定
近年では自校の魅力や付加価値を今一度見直し、発信する動きが増えています。
そのひとつが「改革」です。改革といってもピンと来ないかもしれませんが、明確なビジョンを持ち、それを中長期的な計画を立てて具体化していくことと考えてください。
自校の強みを客観視し、大学としてのミッションや個性化に積極的に取り組みながら、自分たちがどのポジションにいることで価値を見出してもらえるかを考え、改革を実施しましょう。その上で、改革の内容に合わせて募集戦略を見直していくことが必要です。
募集・活動エリアを広げたい
大学がどんなに魅力的でも、PRを行うエリアの人口が少なければ、獲得できる志願者数には限界があります。地元や近隣県からの応募者の減少が起きているのであれば、募集エリアや活動エリアを広げることを検討しましょう。
募集エリアを広げるといっても、校舎を増やして大学に触れる学生を増やすということではありません。
例えば、これまで地元や近隣県を中心にPRを行っていた場合、さらにその外へと対象を拡げたPRを行ってみましょう。遠方のエリア向けに「地域の特色」「地元のユニークな企業との連携」など、「この地域にしかない魅力」に関する情報を訴求していくのも有効な施策の一つです。
また、試験会場を拡大する方法も効果的です。大学キャンパス以外の離れたエリアに入学試験会場を設置すれば「受験してみようかな」という学生も増えるでしょう。
新たにターゲットとなるエリアに対して訴求していく際は、これまでの戦略とは異なるアプローチが必要になるため、学生募集戦略の見直しが必要です。
入学後の中退や留年が多い
大学を中退する学生にその理由を聞くと「留年したから」というケースが見受けられます。
海外留学や資格取得と並行して通学するため、意図的に留年するケースもありますが、そうした目的を持った留年での退学者はあまり多くありません。留年から中退という流れになってしまうケースは、不本意に留年したことが大きく影響しています。
自校に中退や留年する学生が多い場合は、学生が「この大学で頑張りたい」というモチベーションが低下している傾向にあるのかもしれません。自分の大学に誇りを持てるように、大学側も積極的に動く必要があるでしょう。
競合校が大きな改革を行っている
競合校が改革を実施している場合、志願者が流れてしまうリスクが高まります。特に、エリアが隣接している競合校の動きには注意し、先手を打つことが重要です。自校も戦略を見直して、対抗しましょう。
いま実施すべき学生募集戦略とは?
入学者数を増やすために、どのような取り組みを行えば良いのでしょうか。ここでは、学生募集戦略を検討するにあたって改めて意識しておくべきポイントや、実施すべき戦略の例をご紹介します。
学生のニーズを知り、真の訴求点を明確に
学生を増やしたいと考えるなら、まずは学生のニーズを知ることから始めましょう。
近年、学生人口は減少傾向にあるにもかかわらず、大学の数は増加傾向にありました。多種多様な大学が増えているのは、学生のニーズが多様化しているということを示しています。
そのため、「うちの大学にはこんな強みがある!」という、特化した強みを明確に打ち立て、他校との差別化を図ることは大変重要となってきます。
差別化を図るためには、まず学生がどのようなニーズを持っているかを知り、分析を行いましょう。ニーズを知ることは、学生募集の戦略に欠かせません。
具体的には、学生がどのような情報を検索しているのかを調べたり、オープンキャンパスなどの各イベントでの学生向けアンケートを実施したりするのも有効です。
また、在校生へのアンケートも実施しましょう。在校生がいま大学に何を求めているかを把握しておくことは、新入生を募集するにあたってとても役立ちます。
このように、学生のニーズに沿った展開ができるように、多方面に情報収集のためのアンテナを張っておくことが重要です。
競合校を分析し差別化を
自校の強みと感じている部分に、同じような部分を強みとする競合校がいる場合はどのように差別化すれば良いのでしょうか。
まずは、競合校の分析を行い、自校とどう違うのかをリストアップします。
自校にしかない要素があれば、その「違い」の部分を自校の「強み」と絡めながら打ち出せないか検討してみましょう。
もしタイミングが遅く、競合校に先手を打たれてしまった場合は、次の一手は必ず先手が打てるよう、準備を整えておかなければなりません。
学校ブランディングも一緒に
これからの時代、競合大学に負けない差別化をするなら「経済なら○○大学」「△△業界の学びなら○○大学」というような明確な強みを持つことが必須と考えましょう。強みを持つことは、究極のブランディングになります。
また、大学案内やパンフレット、WebサイトやSNSに使うツールのベースデザインやカラーを統一しておくことも重要です。見る媒体によって印象が違うと「この大学って、どんな学校なんだろう?」とイメージしにくく、受験生の記憶に残りにくくなります。
統一したトーンで展開し続けていると「この大学はこんなイメージ」「この大学っぽいな」と学生側に強く印象づけることができます。
こうした取り組みは、ブランディングにつながります。
ブランディングは、在校生や教員、職員にとってもプラスに作用しますので、ぜひ実施を検討してみてください。
短時間で魅力が伝わるコンテンツ作り
日々忙しい受験生は、短時間でその大学の魅力が分かるコンテンツに惹かれる傾向にあります。
短時間で魅力を伝えやすいコンテンツの代表格として挙げられるのは「動画」です。
短い動画で大学や学部の様子、学生の一日を紹介したコンテンツは注目度が高く、受験生の関心をひきつけやすい傾向にあります。
丁寧に細かくじっくり、というよりは、分かりやすく短くというのが時流です。学生の傾向を理解したうえで、コンテンツ作成に取り組みましょう。
自校の強みを生かせる分野にリソース投下
「自分たちの強みを生かした分野」というものが、大学には必ずあります。その分野を洗い出し、しっかりと磨き上げ、うまくPRしていくことが重要と考えてください。
自校の強みは何かを、どうやって見つけたら良いか分からないときには、現在在籍している学生が選んでくれた理由を分析してみてください。
競合校が多い分野の場合は、勝率が低くなってしまうリスクもあるため、他にニッチな分野を探せないか検討するのもひとつの方法です。
教職員にもブランドイメージを浸透させる
大学のブランドイメージは、志願者数に大きく影響します。学校を広く知ってもらうための施策はもちろんですが、教職員自身が自分の大学にブランド力を感じることも重要です。
その大学の教員、職員であることに誇りを持つようになると、在校生はもちろん、受験生やその保護者にも大学側の姿勢が伝わるようになります。大学のロイヤリティを高め、存在感を出すことにつながるのです。
「自分は○○大学の教員だ」「○○大学に勤めている」ということがアイデンティティとなるような空気感を作りだすためにも、まずは大学内部からブランドイメージを浸透させることが重要と考えましょう。
地元の高校へのアプローチを強化
学生募集戦略を見直す際は、地元の高校に対するアプローチ内容も見直しましょう。
高校への訪問頻度や説明会の内容の見直し、進学相談会の見直し、学習面で連携を取る「高大連携」を積極的に進めていくことも重要となります。
こういった取り組みの内容はなかなか刷新が行われず、「去年と同じ」になりがちな部分です。しかし、変わり映えのない内容を繰り返していては、競合校が新たな取り組みに打って出た際に見劣りしてしまう可能性があります。
地元高校の生徒はもちろん、教員に対しても自校が魅力的に見えるよう、工夫を重ねていきましょう。
学生が考える「自校へのイメージ」と現実のギャップを埋める
大学側が「自校について、こうイメージしてほしい」と考えるものと、学生が自校に対して抱いているイメージにギャップがあるケースは、実は珍しくありません。
在校生へアンケートなどを実施してギャップを把握し、それを埋めるために何ができるかを考えましょう。
「こんな大学だと思ってほしい」という大学の理想とするイメージを明確化し、それと同時に「在校生が抱いている」イメージが分かれば、そのギャップを埋めるのは実はそれほど難しくありません。
原因によって対策はさまざまですが、まずはこの2点を明確にすることから始めてください。
母集団形成と育成の違いを意識する
例えば、大学側からすれば資料請求数や説明会への参加者が多ければ「母集団が形成できているので、生徒募集にはそれほど苦戦していない」と感じているかもしれません。
しかし、実際の出願率が低ければ、必ずしもそうとは言えません。逆に、資料請求数や説明会などが少なくても、出願率が高ければ問題ないのです。
問題は、母集団が形成できていても、そこから出願につながらないことです。
母集団をしっかりと育成するためには、母集団に響くように自校の魅力をしっかりと伝える必要があります。
そのためにも、どのようなタイプの学生が自校に興味を持っているか情報を集め、分析し、訴求方法を検討しましょう。
まとめ
学生募集戦略を見直すべきタイミングや、取り入れたい戦略の例についてご紹介しました。
全体を通して重要となるのは、自校の強みを明確にすること、そしてその強みを活かしたアプローチをすることです。魅力をいかに生み出し、伝えるかという点に重点を置き、戦略の見直しを進めていきましょう。
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